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同性婚 世界の現状は

世界では性的マイノリティーの人たちの権利をめぐる議論が活発になっています。今回の特集はそのひとつ、同性どうしの結婚、同性婚をめぐる世界の動きについてお伝えします。
「国際レズビアン・ゲイ協会」によりますと、ことし4月の時点で、同性婚はヨーロッパや南北アメリカを中心に34の国と地域で認められており、アジアでは唯一、台湾で認められています。
合法化について賛否がわかれ、様々な意見がある同性婚。性的マイノリティーの権利向上に取り組み、同性婚をめぐる世界の議論の現状に詳しい、明治大学の鈴木賢(すずき・けん)教授に話を聞きました。
・合法化が進む世界の現状
まず世界の同性婚をめぐる状況について伺います。欧米や中南米、オセアニアなどの地域では、なぜ合法化が進んでいるのでしょうか？
そもそも人権思想自体が欧米から生まれたものです。マイノリティーであっても、いかなる属性の人間でも、平等に権利を享有することができるという原則です。
多くの国々はキリスト教の文化圏にありますので、もともと同性間の性行為に刑罰を科すという法律を持っていました。そうした国々では最初に非処罰化、処罰をやめるという形の法改正が進みました。
その次に同性愛者の権利を保障する法律の整備に進んでいきましたが、アジアの国では、そもそも同性間の性行為に処罰をするという法律がありません。同性愛の問題はこれらの国、アジアや日本もそうですが、プライベートな問題で公的な、法的な問題として議論する対象とは考えられてきませんでした。そのため、なかなか法的な議論が進まなかったということだ思います。
・アジアで唯一同性婚が認められている台湾
アジアで唯一、同性婚が認められているのが台湾です。
4年前に合法化され、これまでに1万組以上の同性カップルが結婚。外国籍の同性との結婚も認められています。
台湾では1990年代から、性的マイノリティーの権利の向上を求める運動が活発になりました。そして6年前、同性どうしの結婚を認めていない民法の規定は憲法に違反しているという司法の判断がくだり、合法化にかじを切ることになりました。
台湾で同性婚の合法化に向けた動きがあったことは、どういうことだと理解できますか？
台湾は自由や民主主義、人権とか法の支配など、よく言われる“普遍的価値”というものを非常に大事にしているところです。台湾にとっては、それがアイデンティティーになっていると言ってもいいです。要するに、台湾の存在を脅かしているのは中国ですので、「自分たちは中国とは違う、もっと人権を尊重するところだ」ということを世界にアピールすることは当然あり、その文脈の中で同性愛者の人権の問題も議論されてきたと思います。
同性婚の合法化から4年。台湾では、世論の変化も見られるといいます。
合法化される直前の2018年は、世論の過半数が反対の立場で、同性婚を支持する人はおよそ37%にとどまっていましたが、最新の調査では62%あまりが支持しています。
私はことしの3月まで1年間台湾で在外研究をする機会がありましたが、台北の街や大学のキャンパスではよく同性のカップルが手をつないで親しく歩いている姿を目にしました。
制度ができたことで人々の意識が変わり、あるいは当事者の自信も深まっています。性の多様性を受け入れる方向で急速に社会が変わってきていると感じますね。
同性婚へ反対する方の割合は、現時点でどれぐらいいるのでしょうか？
ことしの結果では36%の人が「同性カップルには結婚する権利は無い」と答えています。これは決して少なくない数字です。この問題は世代間の意見の違いが随分際立っています。若い人はほとんど全員が受け入れられるのですが、高齢の方にはそうでない方がかなり残っているというのは台湾の特徴ですね。
・「人間は平等で同じ権利を持つ」という原点を意識
合法化を決めた国や地域では、反対の声がある中でも、「平等」という観点が重視されていると、鈴木さんは指摘します。
賛成と反対と2つあるような状況の中で、この同性婚をめぐってよりよい社会にするためには、一体何をしていくとよいのでしょうか？
自分の体の性と性自認が一致しない方が一定程度おられるということが、だんだん知られてきているのはそのとおりだと思います。
問題は、理解がどれだけ広がっているかということではなく、自分が理解していない・できない、あるいは共感できない・していない人であっても、人間である限りは平等で同じ権利を持つのだという“その原点”だと思います。