友達の父親を襲撃した話

1 : 2022/01/04(火) 06:29:01.94 ID:NQ4Tkp190
俺が小学校6年生に進級したときの話。

6年生初日の登校日。

特にクラス替えもなく見慣れた顔触れで

「春休み短かったよな〜」とか「FFの裏ボス倒したぜ」とか いつも通り友達と会話をしてる所で教室の扉が開き、先生が入ってきた。

「あ〜、やっぱりまたふるっち先生かよ〜」

「うるさい。大体お前らわかってただろ?うちは二年ごとに受け持つ学校なんだから」

「先生の顔見飽きた〜。」

こんな何気ない会話が教室に響き渡る。

先生自身も全員去年と同じ顔ぶれなので特に気張って挨拶もすることもなく「今年もよろしく」程度の挨拶を済ますと

だらけてた先生の顔が一瞬引き締まる。

2 : 2022/01/04(火) 06:29:22.16 ID:NQ4Tkp190
「今日から転校生がきたんだ。いいか?みんな仲良くしてやれよ〜」

「わかってるよ〜。席が一個多いもん!男?女?」

「焦るな。今、紹介する。坂倉〜。入ってこい〜」

クラスみんなの視線が扉に注がれる。

横に座ってる山田花子を7〜8発蹴られたような顔したブスは「出会いの予感♪」などと、狂おしいほどにイカれた言葉を汚い顔面にある肛門から吐いたのを覚えている。

扉が開き一人の少年が下を向いたまま入ってきた。

3 : 2022/01/04(火) 06:29:40.01 ID:NQ4Tkp190
髪が無造作というよりかは、むしろぐちゃぐちゃといった表現が近い

耳まで伸ばした黒髪に、二重でやや釣り上がり気味の目。

顔は面長で細く引き締まり、やや大人びた顔立ち。

キツネ顔のホストのような男にクラスの連中は目を奪われる。

「うわ〜♪」「きゃ〜♪」という黄色い声援というよりかは

もはやピンクに近い天井に突き抜けるような悲鳴を女子達があげ

その声を聞いただけで男子数人は既に不愉快そうな顔をしてる。

普通の転校生だったら自己紹介でオロオロ戸惑い上手にしゃべれず緊張感を丸出しにするのだがこの坂倉は違った。

半ばふてくされ気味に「坂倉・・」と告げ

そのまま少しの間があくが

二つ目の言葉は彼の口から出てこない。

先生が「趣味とか特技は?」と聞いても「別に・・」と、小さい声でつぶやく。

4 : 2022/01/04(火) 06:29:53.02 ID:NQ4Tkp190
横に座ってるブス女は「声もかっこいい」などと鼻息を荒くし、ノ〜トを広げ おもむろに「坂倉 ブス子」と書き名字と名前のバランスを心配していた。

「席どこ?もういいでしょ先生?」と坂倉は告げると舌うちしながら席につく。

俺はこの坂倉の態度が鼻についた。

女達がイケメンとのロマンスを妄想で繰り広げるにはもってこいのオカズになりえるルックスだ。

こいつらの声援はどうでもいい。

俺はこの舐めた態度にランドセルを背負わず肩掛けバッグでやってきて どこの角度から見ても生意気なこいつをしめる!と一人意気込んでいた。

78 : 2022/01/04(火) 06:54:30.26 ID:96ng+ZTQ0
>>4の3行目まで読んで挫折したわ
糞つまらん
5 : 2022/01/04(火) 06:30:05.99 ID:NQ4Tkp190
俺は当時クラスで一番喧嘩が強く番長的な存在だった。

発育が早く既に身長が170センチあり他はみんな身長は150センチ台ばかり。

まともに取っ組み合えば体格差ですべて押し切れるので俺に喧嘩で勝てる奴はいなかった。

絶対に負けるはずがない。

大きな自信を持ち、6年生初登校日ということもあり午前中で授業が終わる。

帰りの会が終わり、帰ろうとする坂倉を俺は背中から捕まえた。

「おい!俺がこのクラスで番を張ってる1だ。てめえ挨拶もなしか?」

今、思い返すと「番を張ってる」などと知能指数が低い言葉をかっこいいと思い込み

最高のキメ顔で言っている当時の自分を思い出すと その事実を知るもの全てをこの世から消したくなるが まだ6年生だから勘弁していただきたい。

なんせバイブルがろくでなしブルースだったから・・・

6 : 2022/01/04(火) 06:30:18.76 ID:NQ4Tkp190
「・・・・・・」

「あ?返事でき・・ガブッ!!」

目を合わすよりも言葉を交わすよりも早く 坂倉は俺の横顔を殴りつけた。

俺は一瞬何が起こったかわからなかった。

いきなり殴りかかってくる事など想定していなく

「あれ?なんかほっぺたいてえな?」と理解するのに数秒を要した。

しかし、頭の中で組み立て殴られた事を理解すると

「てめええ!こらあああ!」と坂倉の髪を掴んで振り回す。

この髪をつかんで振り回したのまでは 覚えているが喧嘩の中身はよく覚えていない。

なんとなく覚えているのはとにかく坂倉は防御を一切せず 俺が殴った上から無理矢理殴りかかってくるという狂気じみた喧嘩の仕方をしてきた。

7 : 2022/01/04(火) 06:30:32.25 ID:NQ4Tkp190
喧嘩自体は圧倒的な体格差も手伝い俺の方が有利に進めていたと思うがあまり記憶は定かじゃない。

ただ途中から一切防御しないで 何発も顔面に攻撃が入ってふらふらしてるのに全く引かずひたすら殴りかかってくるこいつに

「もう怖いから終わりにしたい・・」と思っていたのは覚えている。

その後、誰かが教室に先生を呼びに行き喧嘩を止められて終わった。

8 : 2022/01/04(火) 06:30:37.86 ID:6BZazS5V0
エリカ様かよ
9 : 2022/01/04(火) 06:30:42.81 ID:O+Mt0/S/0
よかおめ
10 : 2022/01/04(火) 06:30:45.76 ID:NQ4Tkp190
俺は職員室へ。坂倉は保健室へ連れて行かれ

先生に事情聴取を受け自分から喧嘩を仕掛けたことを正直に話すとマジでたんこぶができたほどの強烈なげんこつをもらい保健室行って坂倉に謝ってこい!と、職員室を追い出された。

「謝んなきゃ・・いけねえのか・・・」

俺は謝るのが嫌だった。

自分から喧嘩を売ったんだから自分の方が悪いのはわかる。

しかし最初の舐めた態度やランドセルじゃなく偉そうに肩掛けバッグを持って現れ いくら喧嘩売る気で声をかけたからとはいえ いきなり殴りかかってきた奴に謝る・・・

考えただけでも気に入らない。謝るなんて冗談じゃない。

俺はそのままランドセルを背負って玄関に向かい靴を履いて帰ることにした。

11 : 2022/01/04(火) 06:30:53.76 ID:F8PigQ68M
うんちぷりおくん
12 : 2022/01/04(火) 06:30:59.74 ID:NQ4Tkp190
「あ〜、謝んなきゃ親に連絡くるかな〜?」

なんて内心ちょっとびびりながら靴を出しているとタッタッタと走ってくる足音が聞こえてきた。

「やばい!帰ろうとしてるのバレたか?」と身を隠そうとしたがここは下駄箱。隠れる場所はない。

もう怒られる覚悟で足音が聞こえてくる先を見つめていると その足音と共に視界に飛び込んできたのは坂倉だった。

13 : 2022/01/04(火) 06:31:13.67 ID:NQ4Tkp190
「あ・・・・・・・・・」

「あ・・・・・・・・・」

お互い目が合い、空気が凍り全ての時間が止まったような空間ができる。

なんでこいつ・・ここに・・・

どうする・・謝るべきか?

頭の中ではいろいろ考えを巡らすも

なかなか良策が見出せず動けない、

そんな静寂の中、坂倉が口を開いた。

14 : 2022/01/04(火) 06:31:28.17 ID:NQ4Tkp190
「・・・・帰んの?」

「あ・・ああ・・・先生にお前に謝ってこいって怒られて。でも謝りたくねえからこのまま逃げるつもり。」

「・・・・・・・・・・・・俺も」

「え?」

「・・・俺もお前にいきなり殴りかかったんだから謝ってこいって言われて・・・・腹立ったから逃げて帰ろうとしたところ・・・」

「は・・ははははは」

空気が緩み、時間が動き出すのを感じた。

張り詰めていた空気は優しく溶けて俺と坂倉を優しく包みこみ、柔らかくなった日差しを浴びながら お互い笑いが止まらなくなった。

15 : 2022/01/04(火) 06:31:46.87 ID:NQ4Tkp190
「んだよ。お前謝れよ!」

「お前こそ謝れよ!」

「嫌だね。」

「俺もごめんだね。」

「んじゃ一緒に帰ろうぜ。」

「似たもの同士、一緒に帰るか!」

どっちも謝らずに仲直りする経験は人生でこれが最初であり最後かもしれない。

俺は坂倉と親友になった。

16 : 2022/01/04(火) 06:32:00.55 ID:NQ4Tkp190
俺はこの喧嘩以降、ほとんどの行動を坂倉と共にした。

学校ではもちろん終わってからも毎日のように一緒に遊んだ。

ただ仲良くなればなるほど不思議な事があった。

小学校6年生ならばたいがい門限がある。

俺の家は当時としては若干甘めで夕方の6時半だったが いつもバイバイするときは「俺はもうちょい遊んで帰るわ」と言っていた。

いくら子供とはいえ、毎回毎回「まだもうちょい遊んで行く」と言ってるのはおかしいと気づく。

しかし一度それについて深く聞こうとしたが何度聞いても「遊び足りないだけ」としか返事が返ってこない。

小学6年生には心配でもそれ以上の事をしてやれない。

俺は気にはなりつつもそれ以上は触れずに時を過ごしていた。

17 : 2022/01/04(火) 06:32:20.70 ID:NQ4Tkp190
ある日、うちの母ちゃんが坂倉を連れて来いという。

俺は小学5年生まではいろんな友達とゲ〜ムをやって遊んでいたが6年生になり急に坂倉ばっかりと遊ぶようになり また外にばっか行くようになって 飯食ってる時も坂倉の話ばかりしてるもんだから坂倉に会ってみたい!と騒ぎ出した。

「なぁ?うちの母ちゃんが会いたいって言ってんだけど遊びにこねえ?」

「え・・?お前の母ちゃんが?・・・別にいいけど・・・」

このとき、少しだけ下にうつむきため息をついた気がした・・・

こいつの表情を今でも忘れない。

18 : 2022/01/04(火) 06:32:36.19 ID:NQ4Tkp190
何はともあれ坂倉が来ると知り菓子やらジュ〜スを用意して出迎える。

時間になって坂倉が来ると「待ってたわよ〜!」とうちの母ちゃんは 坂倉に抱きつき「か!勘弁してください!」と顔を真っ赤にして坂倉はじたばたしていた。

その後、母ちゃんを交え3人で話してたんだが やっぱり母ちゃんがいると坂倉としゃべりづらい。

「もういいだろ!出てってくれよ!」と再三説得し1時間かけてやっと俺の部屋から出て行った母ちゃん。

「悪かったな。しゃべりづらかっただろ?」

「たしかにしゃべりづらかったな。でもいい母ちゃんじゃん」

「そうなのよ。私はいい母親なの♪」

母ちゃん、屋根をつたって二階の俺の部屋の窓に張り付いてた・・・

19 : 2022/01/04(火) 06:33:06.98 ID:NQ4Tkp190
今度は窓にカーテンを絞め

完全防備状態にして俺と坂倉はタバコに火をつけた。

なんとなく悪ぶっていた俺達はタバコを普通に吸うようになっていた。

「こら!ガキャ〜!てめえらタバコ吸ってんじゃねえ!ここ開けろコラァ〜!!」

母ちゃんはカーテンを絞められて帰ったふりをしつつも その窓の下に伏せて盗み聞きを続行していた・・・

しつこいよ母ちゃん・・・・

「わ・・悪かったよ。今、開けるよ!」

ガラガラガラ・・・・

「てめえ!1!いつも言ってんだろ! タバコ吸うなら私の前で吸えって! 隠れて吸って火事とか起こしたらどうすんだ! 吸いたきゃ私の前で堂々と吸え!」

うちの母ちゃんは高校時代は それはもう漫画に出てきそうなクソヤンキーで覚せい剤以外は全て経験していた。

高校時代の写真を見せてもらったがトータルテンボスのアフロにもう一発サンダーをかましたようなバカでかい頭に真っ赤な口紅をひき、ロンスカにぺっちゃんこのカバンを抱え「押忍」と書かれたマフラーを装着していたほどだ。

20 : 2022/01/04(火) 06:33:43.73 ID:NQ4Tkp190
そんな母ちゃんだから俺がタバコを吸おうと酒を飲もうと文句は一切言わなかった。

ただただ言われたのは「私の前でやれ」

陰でこそこそ悪さをすると焦ってロクな結果にならないってのが母ちゃんの持論で 例えば隠れてタバコ吸ってる→見つかりそうになり 焦ってどっかに投げ捨てる→火事を起こす」となったら取り返しがつかないと。

だからいつも「何かするなら私の前でやれ」が口癖だった。

今、思うとホント変わった母ちゃんだったな・・・

そんなこんなで坂倉が帰った後に母ちゃんと坂倉の事をしゃべっていたが母ちゃんが変な事を言い出した。

「あの子、イイ子だと思うよ。だけどなんていうのかな・・・ 凄い私の顔色をうかがってたわね」

「そりゃそうだろ。窓から急に怒鳴りつけてタバコ吸うなら私の前で吸え!って言われたら顔色も伺いたくなるって。」

「そうじゃなくて・・・う〜ん・・・ とにかくなんか凄い怖がってたように見えた。ま、勘違いならいいんだけどね〜」

母ちゃんの言ってた事はこの後的中してたことを知らされる・・・

21 : 2022/01/04(火) 06:34:05.35 ID:NQ4Tkp190
時はもう少し進み6月。

6月には6年生で最大と言ってもいいイベントの修学旅行が控えていた。

当時特に好きな子がいたわけでもないが

「もしかしたら告白されるんじゃねえか?」とかバカな脳内シュミレーションを繰り返し前日はなかなか寝付けずにいた。

そして修学旅行当日。

バスに揺られ、俺達は旅館に着く。

そして旅館に着くなり いきなりハイキングに行くと教師達が言い出す。

坂倉「どうする?めんどくせえしバっくれる?」

俺「いや、無理だろ〜。絶対点呼取るし。めんどくせえけど行こうぜ〜。」

女子1・2・3「坂倉君〜!」

22 : 2022/01/04(火) 06:34:21.14 ID:NQ4Tkp190
坂倉「ん?なんか用?」

女子1「ねぇ?一緒にハイキング歩いて行っていい?」

坂倉「はぁ?やだよ。俺は1と行くし。」

女子2「え〜、じゃあ1も一緒でいいからさ〜。」

俺「おいおいてめえら、なんで俺がオマケみたいになってんだよ?」

女子3「だって、1ってさ。スポーツできるしおもしろいし悪くはないんだけど・・・顔がね〜・・・」

女子1「ちょっと!マジ言いすぎだよ〜!ぎゃはははは!」

女子2「みんなが思ってたこと言っちゃう?」

女子3「だって。惜しいんだもん。顔さえ良ければ坂倉君並みなのに。顔がイケてなさすぎ!」

ただしイケメンに限る!という現実は小学校時代から確実に存在していたのだ。

俺はこの事件で深く心に傷を負った・・・

23 : 2022/01/04(火) 06:34:35.85 ID:NQ4Tkp190
俺は死ぬほど悔しかった。

そりゃ俺だってもっとかっこよく生まれたかったし何も好き好んでナマズみたいな顔に生まれてない。

運動も喧嘩も俺の方がちょっとだが坂倉より上。

だが顔面レベルは 坂倉>>>>>>>>>>>>俺=ナマズ ぐらいの差があり、女子人気は圧倒的に坂倉が勝っていた。

俺は思った。

こ の バ カ 女 達 の 邪 魔 し て や る

24 : 2022/01/04(火) 06:35:09.20 ID:NQ4Tkp190
ハイキングが始まり、このクソバカ女3人組は いろいろと坂倉に質問を始める。

クソ女1「ねぇ?休みの日、坂倉君は何してんの?」

俺「呼吸してんだよ。当たり前だろボケが。」

クソバカ女2「ねえねえ?好きな女の子のタイプは?」

俺「パンツにうんこつけない女だよな。だからお前らは無理だって。」

ビチグソメス3「彼女とかつくらないの〜?」

俺「俺が坂倉ならお前らからは選ばねえよ。」

物凄い低いレベルのガヤだが当時は小学6年。これで精いっぱいだった・・・・

糞×3「超うざいんだけど!1には聞いてないし!少し黙ってくれる?」

俺「文句あんならてめえらが消えろよ。俺は坂倉とハイキングするって決めてたんだよ!な?」

坂倉「あ・・ああ・・。ま、1と約束してたし文句あるならおまえらがどっか行ってくれ。悪いな」

屁×3「マジで言ってんの?ひどい〜!でも・・かっこいいから許しちゃう〜♪」

坂倉は本当にいいやつだし大好きだけど10年以内に56すリストに入れることにした。

25 : 2022/01/04(火) 06:35:43.72 ID:6BZazS5V0
母ちゃんが覚醒剤以外経験したってのがちょっと表現として具体性に欠けるわ
26 : 2022/01/04(火) 06:35:44.95 ID:aHZtTzxla
立ったら書く
32 : 2022/01/04(火) 06:37:19.87 ID:F8PigQ68M
>>26
kwsk
27 : 2022/01/04(火) 06:35:46.37 ID:NQ4Tkp190
そんなこんなで俺は嫉みパワー全開で糞どもの邪魔をし続け、結果的には ただでさえ薄かった人気をさらに堕落させるに飽き足らず「坂倉君を奪い取る会」なるものが女たちの間に誕生し
同時に「1討伐隊」も編成され あろうことか、クラスで不動の2トップと呼ばれ片方は女ながら死神顔の女と いつもバッタと会話し「飛びたいんだよね。飛びたいんだよね」と囁き続けるヤク中のような女を刺客として送り込まれ
逃げ惑ううちに坂倉とはぐれるという事件も起きた。

ちなみに死神もヤク中も特に坂倉は好きではなかったらしいが「頼まれたから」という理由で俺を暗殺しにきたらしい。

女の団結力はこれから恐ろしい・・・

そんなこんなで修学旅行の時間が進み夜になると坂倉の様子が少しおかしくなってきた・・・

飯を食い終わったあたりから なんか焦ってるような落ち着かないような素振りを見せている。

28 : 2022/01/04(火) 06:36:08.40 ID:aHZtTzxla
おっ立ったな
じゃあ語ってくわ
29 : 2022/01/04(火) 06:36:08.69 ID:NQ4Tkp190
坂倉「・・・・あのさ・・・1」

俺「ん?どした?」

坂倉「俺さ、調子悪いから風呂やめておくわ・・」

俺「え?マジで?どした?大丈夫か?」

坂倉「う〜ん・・ダメかも・・・とりあえず先生のとこ行って寝てくるわ」

と、告げると部屋から出ていき先生の所へと坂倉は向かっていった。

俺は心配しつつも風呂に入り帰ってきて30分ぐらいしたら坂倉は元気な顔をして部屋に戻ってきた。

俺「大丈夫か?」

坂倉「ああ!大丈夫だ。バファリン飲んだら速攻で良くなったわ。やっぱすげえなバファリンは!」

さっきとはうってかわって急に元気になった坂倉を見て安心し、一緒に遊び夜が更けていく・・・・

30 : 2022/01/04(火) 06:36:24.33 ID:NQ4Tkp190
俺と坂倉はずっと起きていた。周りはみんな寝静まった深夜2時・・・

バッグに隠してきたタバコをすっと取り出す坂倉。

俺「おまえ・・・しっかり持ってきてたんか!やるじゃん!」

坂倉「へへへ・・・まあ一服しようぜ。」

窓を開けると温かい空気が入ってきた。

時期は梅雨だがこの日は空に満月が輝いていた。

満月の遥か下で少年二人が灯をあげ小さく赤い満月二つを作り、煙をあげる。

タバコが美味いと思っていたわけじゃない。

でもどこか大人に近づきたくて早く大人になりたくてタバコに手を出していた少年二人が少し大人の階段をまたのぼる・・・

坂倉「・・・なぁ・・・早く大人になりてえよな・・」

俺「ああ。そうだな〜。堂々とタバコ吸いてえな〜。」

坂倉「そうじゃなくてさ。早く働いてさ。自分で金稼いで一人で生きていけるようになりたい・・って思うんだ。」

正直俺には何を言っているのかわからなかった。

31 : 2022/01/04(火) 06:36:58.94 ID:NQ4Tkp190
俺はただただ大人に憧れていただけで一人で金稼いで生きていきたいと思ったことはないし そんなことより夜遅くまで堂々と遊びたい!とか バイクに乗ってみたい!とかそんな浅い大人像しか頭にはなかった

俺「俺はそんなこと考えたことねえな。お前大人だな〜。」

坂倉「子供だよ。子供だから・・・悔しいんだよ・・」

いつしか小さく赤く輝いてた満月は一つだけが呼吸に合わせ時に強い輝きを放ち もう片方は消えそうな光を必死にとどめていた。

坂倉「俺さ・・・俺の親さ・・・ 親父の方が血が繋がってないんだよ。」

俺は坂倉の家族の事はほとんど知らなかった。

聞いても何も教えてくれないし家にも呼んでくれない。

まああんまり言いたくないんだろうな〜くらいにしか思っていなかった。

33 : 2022/01/04(火) 06:37:38.17 ID:NQ4Tkp190
俺「そ・・そうなのか・・・」

坂倉「俺の親父と母ちゃんさ。俺が小さい時に離婚してさ。んで母ちゃん、2年前に新しい親父を連れてきたんだ。
こいつさ・・・ロクでもねえ奴でさ・・・母ちゃんばっかに働かせて、自分は働かねえんだ。
普通男が働いて女が料理したり洗濯したりするだろ?俺からするとそれがおかしくてさ・・・あるとき言ったんだよ。その親父に「仕事しねえの?」って。」

俺「・・・・・・・・・・・・・」

坂倉「そんとき、俺は胸倉つかまれて「誰に物言ってんだ!クソガキ!」っておもいっきりぶん殴られた。鼻血が出て、尋常じゃねえ痛さで泣いた。泣いてるのにまだ殴りかかってくるんだ・・・あんまり殴られるとさ。目の前が白黒になるんだよ。知ってるか?」

俺はそんな経験はない・・・・

なんて言葉を返したらいいのか戸惑った・・・

戸惑いを隠せない俺を見ながら坂倉はまだ話を続けた

34 : 2022/01/04(火) 06:37:56.90 ID:NQ4Tkp190
坂倉「俺が殴られて、泣いて、また殴られてを30分ぐらい繰り返したのかな・・ 最後意識がなくなったからわかんないけど・・・ で、意識が戻ったら母ちゃんがいたんだ。俺は泣きたかった。母ちゃんに助けてほしかった。ちょっと聞いただけでこんな目にあわす親父に怒って欲しかった。母ちゃんは俺に言った。

   「こ の バ カ!あ の 人 に 謝 れ !」

もう俺は坂倉が何を言っていたのかわからなかった。

ただ、あまりにも自分の理解できる範疇を超えた話を聞くと体が震えて声がでなくなることをこのとき初めて知った。

坂倉「俺はその日、親父に無理やり土下座させられた。母ちゃんも土下座してた。 親父は「ガキの躾はしっかりするって言ったんだろうが!んな生意気なバカガキならどっかに捨てて来い!と叫んでた。

   母ちゃんは「ごめんなさい。きちんと躾けるから許して」と泣いて謝っていた。

   俺はもう体に力が入らなくて、何が起こってるのかわからない・・ただただ謝らさせられて、やっと許しが出て鏡を見たら、俺の右目が完全にふさがるほど腫れて口から血を流しててびっくりした。

   それを見て俺は余計に怖くなった。暴力を振るわれたことじゃない。自分の息子がこんなひどいけがをしてるのに

   土 下 座 さ せ る 事 を 優 先 さ せ た 事 に !」

35 : 2022/01/04(火) 06:38:19.68 ID:NQ4Tkp190
俺は・・どうすれば・・いいんだろう?

こいつを・・どうしてやればいいんだろう?

タバコを吸って大人ぶって喧嘩が強いから俺は頼りになる男だ!なんて自分に酔っていた。

それが何の役にも立たないこと。

自分が子供だということに気がつかされた。

話を聞いてるだけで足が震えうまく酸素を体内に運べなくなりそうになった。

恐怖で浅く早い呼吸になるのを感じ もうやめてくれ!と叫びたかった。

声が出れば叫んでいたんだろうか・・・?

36 : 2022/01/04(火) 06:38:36.40 ID:NQ4Tkp190
坂倉「それまでは会話は一切しなかったオヤジ。特に暴力をふるってたわけでもなかった。ただその日を境に俺は事あるごとに暴力を受けてきた・・ 俺が帰ってきたから競馬がハズれたんだ!と怒鳴られ 泣きながら気をつけをさせられ殴られ続けた事もある・・・

   母ちゃんは・・・たすけ・・て・・くれ・・なか・・った・・」

キツメ目の少年は少し目尻を下げそこから一筋の滴を落とす。

その滴には・悔しさ・悲しみ・恨み・絶望 さまざまな負の感情が溶けている。

どこか大人びた表情の細見の顔が中心に向かってぎゅっと凝縮され年相応に見える子供の顔になっていた。

37 : 2022/01/04(火) 06:38:53.19 ID:6BZazS5V0
こっから本当の父親襲撃する流れになるんか?
38 : 2022/01/04(火) 06:38:54.85 ID:NQ4Tkp190
坂倉「・・・はは・・わりいな・・こんな話して・・・」

俺「いや・・別にいいけど・・・」

坂倉「修学旅行明日もあるだろ?俺、風呂に入りたくねえんだ。背中にさ、すげえ火傷の跡があってさ。それ見られたくねえんだ。明日も入らなかったらお前心配するだろ?だからしゃべっちった。ごめんな。」

俺「・・・・・・・・・・・・・・・」

言葉というのは頭で考えてしゃべっていないのだと俺はその時深く理解した。

俺はこいつにかける言葉を必死に探した。

「元気出せよ」「俺が力になってやる」

そんな言葉が浮かんでは消えていく。

俺がどうこうしてやれる自信がない。

頭の中で浮かんでは消えていき俺の口からは何も出てこなかった・・・

人間、言葉を探すような状況じゃ会話はできない。

俺「・・・・わりい・・・何も言えねえや・・」

39 : 2022/01/04(火) 06:39:17.43 ID:NQ4Tkp190
坂倉「・・だよな・・何も言えねえよな・・・ 誰にも話したことなかったけど何も言えないのはわかってたんだ。でもせっかくだ。もうちょい聞いてくれ。」

そのあとも坂倉はしゃべり続けた。

虐待がひどく噂になり何度か児童相談所の人が訪れ問題になったこと。

血のつながらないオヤジが働きもせずパチンコに通いつめ、そこで暴れて問題沙汰を起こし近所で評判になってしまったこと。

それを母ちゃんがおびえ始め いきなり引っ越しさせられたこと。

そして近所で噂になったときに友達の家に行くと白い目で見られ「あなたの家、危ないんでしょ?」と心無い事を言われ「早く帰ったら?」と半ば追い出されるよな目に何度もあったこと。

40 : 2022/01/04(火) 06:39:47.36 ID:NQ4Tkp190
俺はそれを聞いて母ちゃんが「顔色をうかがってる気がする・・」というのが当たってたことに気づいた。

そして俺は坂倉と初めて一緒に夜明けを迎えた。

次の日は坂倉は俺を避けるように女たちと行動していた。

俺は俺でどうしてやったらいいのか?とか先生に言うべきか?とか考えたが 坂倉自身が怖くなってしまった・・・

まだ小学6年生に受け止められるレベルの話ではなく その話を聞いたこと自体を無かったことにしたかった。

恐怖から俺は坂倉と行動を共にできず 修学旅行は終わりを迎えた・・・

修学旅行が終わり その後、一瞬間ほど俺は坂倉と口を利かなかった。

気まずさと恐怖でどう接していいかわからなかったのだ。

ただ家に帰れば頭の中は坂倉の話で埋め尽くされろくに寝れない日が続いた。

どうしたらいいのか・・・?

先生に相談すべきなのか?

いろいろと考えを巡らすが結論はでなかった。

41 : 2022/01/04(火) 06:39:51.00 ID:F8PigQ68M
これ実話だよね
埼玉秩父養父殺害事件
日本で初めて小学生に死刑が宣告された事件
42 : 2022/01/04(火) 06:39:53.12 ID:ziZ00QC70
なげぇ〜
43 : 2022/01/04(火) 06:40:35.79 ID:16Yt0Iwy0
初めて読ませるj民に遭遇して困惑
44 : 2022/01/04(火) 06:40:59.60 ID:NQ4Tkp190
俺は最低だと思ったが違う小学校に通ってた本田に電話して今まで坂倉から聞いた話をそのまま伝えた。
誰かに聞いて欲しかった。
俺だけじゃ抱えきれないし誰かに力になって欲しかった。
本田は幼稚園からの幼馴染で仲もよく泊まりにいったりきてたりしてたほど。
小学校4年生の時に家出を画策し 夜中に抜け出して警察に補導されたり祭りの最中に爆竹をぶっぱなして大騒ぎにさせたりと一緒にバカをやってきた仲間。

同時に柔道を小学校4年から始め 喧嘩もなかなか強く性格も豪快だったこいつに相談した。

話を聞いた本田は俺にこう伝えた。

「んじゃさ、俺とその坂倉と1と・・・ ん〜、もう一人は俺が見つけるわ。相手は大人だし4人掛かりでさ。その親父をボコボコにしよう !」

俺「は・・はぁ?何言ってんだお前・・・」

本田「だってそれしかねえじゃん。 助けてやりたいんだろ?そのおやじが俺たちにボコボコにされてびびったら もうその坂倉ってやつに手を出せないだろう?

大丈夫。俺もお前も喧嘩強いし、坂倉ってのも強いんだろ?もう一人連れて行きゃ絶対勝てるって!なんかかっこよくね?」

俺には出ない発想だった。

普通は誰か大人に相談するべき!って思いその大人に誰を選ぶのか四苦八苦する所だ。

だけどこいつは子供たちの力だけでなんとかしようと言ってきた。

俺は何も坂倉に声をかけてやれなかった悔しさがあった。

大人ぶってたけど何もできない子供だって思い知らされた。

でも・・ここで・・大人を打ち負かすことができたら・・・

頭の中でぐるぐると駆け巡るが答えはすぐに出た。

45 : 2022/01/04(火) 06:41:35.32 ID:NQ4Tkp190
「よし!やろう!ぶっ殺してやろうぜ!」

俺は明確な目標が出て俄然やる気になった。

その後、子供の考えはしょせん子どもの考え。

現実は厳しく警察も出てくる大騒動になり ひどい目にあうとも知らずに意気揚々とはしゃいでいた。

まずは坂倉を説得しなきゃならない。

ただ坂倉がこの話に乗ってくるか?

正直微妙だと思っていた。

まず坂倉にとっては暴力をふるわれようとも家族だということ。

既に虐待にあっていて親父に対して恐怖心を抱いてしまってること。

いじめられっこは仕返ししようと思っても

今まで傷つけられた経験が頭をよぎり絶対に反抗できない精神状態になると聞いたことがある。

ただのいじめじゃない。虐待レベルのダメージを体異常に精神に傷つけられてるあいつが この話に乗ってくるか?

しかし悩んでも答えはでない。

その電話をした次の日に学校に向かい もう何も考えず坂倉に話しかけてみることにした。

46 : 2022/01/04(火) 06:42:04.32 ID:NQ4Tkp190
俺「・・・・よう・・・」

坂倉「・・・・おう・・・」

俺達は修学旅行以来口を聞いていない。

俺はこいつの力になりたいと思っていたが抱えきれずに逃げ出したしまっていた。

坂倉からしたら自分の弱みを晒したのにびびって逃げた奴にうつってるはずだ。

お互いがお互いを牽制しあうような空気。

どっちも二の足が出ず膠着してた所に一人のブスが現れ空気を壊してくれた。

ブス「あ〜!おまえら元サヤに戻ったな〜!マジでホモなんじゃないおまえら〜!」

俺「バカか!俺らはホモじゃねえよ!」

坂倉「お・・おう・・でも俺はこいつのこと好きだけどな。」

・・・・・言葉が出なかった。

俺はこいつを裏切った形を取ったのに こいつは俺の事をまだ信じてくれてた事が本当に嬉しくて ブスがいなかったら泣いてたかもしれない。

48 : 2022/01/04(火) 06:42:23.05 ID:Y/S62+bId
誰が読むことを想定して書かれたものなんだろう
49 : 2022/01/04(火) 06:43:11.08 ID:NQ4Tkp190
ブス「うわ〜!マジで坂倉君?マジでホモ?」

坂倉「ホモじゃねえけどこいつは好きなの!それでいいだろ?」

俺「俺は・・・愛してるぜww」

ブス「あ〜!きもいきもい!仲良くどうぞ!お邪魔しました!」

坂倉「ぷっ・・おまえ愛してるって・・・気持ちわりい〜!近寄んなよ!」

俺「お・・お前の方こそ好きだとかいうなよ。おまえはモテるけど俺はモテねえんだぞ!」

小さなキッカケをくれたブス。俺は今でも感謝してる。

そのあとちょっとしゃべりながら俺はいつ作戦を言いだすか伺っていた。
実際、親を一緒に殴ろうっていうんだから普通じゃ考えられない相談だ。
しかしなかなか切り出せずにいた俺の空気を察してか坂倉から声をかけてきた。

坂倉「なぁ?何か言いたいことあんの?」

俺「ああ・・・実はさ・・・・」

坂倉「ああ・・・」

俺「あの・・・・さ・・・」

坂倉「なんだよ!お前気持ちわりいな〜!言いたいことあんなら早く言えよ!」

俺「・・・・・・あのさ、お前のオヤジ・・・俺達でぶっ飛ばさねえ?」

切れ長の二重のキツネ目がまるでタヌキのようにまん丸になった。俺が言ったことをまるで理解してないことが一目でわかるリアクション。

50 : 2022/01/04(火) 06:43:22.60 ID:AduZFqRHa
VIPっぽい
51 : 2022/01/04(火) 06:43:29.45 ID:NQ4Tkp190
坂倉「はぁ?何言ってんの?」

俺「・・・落ち付いて聞けよ」

俺はそこから本田というやつに相談したこと。

勝手に人に相談したことを謝りつつ本田ってやつが二度とお前に手を出さないように徹底的にぶちのめそうって作戦を立ててること。

本田はどういうつもりか知らないが俺はお前をなんとか助けてやりたいと必死に伝えた。

真ん丸な目をして驚いた表情を浮かべていたが話が進むにつれて目は鋭く上向きに戻ってくる。

しかしその目線は徐々に下に降り 話終える時は俺と視線を合わせず教室の地面を見ていた・・・

坂倉「・・・・それ・・マジで言ってんの?」

俺「ああ。マジだ。やらなきゃやられる。」

坂倉「・・・お前後先考えてくれたのか・・?」

俺「え・・・・?」

坂倉「もし作戦が成功しても俺は親父と母ちゃんと住み続けるんだぞ!どんなひどい目にあわされるかわかんねえ!俺は一回抵抗してオヤジをツネったことがある!そんとき何されたかわかるか!?俺はな・・俺は・・・・傘の先で・・ 手の平を・・・刺されたんだぞ・・・」

俺「・・・・・・・・・・」

坂倉「そんな目にあってるのに一緒にやれって? 無茶言うなよ!それに・・・成功して・・親父がおとなしくなって・・ いじめられることがなくなっても・・・母ちゃんは・・・ きっと・・あいつの味方を・・する・・・」

徐々に声が小さくなっていく・・・

人間、言葉に力がないときは前向きな発言は出ない・・・

52 : 2022/01/04(火) 06:43:54.90 ID:NQ4Tkp190
俺は理解しきれていなかった。

こいつは虐待そのものも辛いが自分と血がつながってる実の母が自分を傷つけるオヤジの味方をするのを見るのが 何よりもきつかったんだ・・・

俺「・・・母ちゃん・・やっぱ好きか?」

坂倉「・・・・ああ・・・あんな母ちゃんだけど・・・ 親父がいなくなってから・・ずっと二人だったし・・・ また・・一緒にさ・・どっか出かけてえよ・・」

この一瞬で様々な事が頭をよぎる。

そして出てきた答えは「やめておいたほうがいい」と出た。

男と女の事はよくわからない。

けど仮に成功した後に母親に今まで以上に辛く当られたらこいつは・・・・

53 : 2022/01/04(火) 06:44:16.60 ID:NQ4Tkp190
俺「・・・でも・・このままでいいのか・・?」

坂倉「・・・・・・・」

俺「失敗するかもしれない。母ちゃんにつらく当たられるかもしれない。でも今のまんまでいいのか?」

坂倉「・・・・・・・・・・・」

俺「俺は今のまんまじゃいけないと思う。絶対お前はきついはずだ。 しかも逃げるに逃げられない。だったら誰か大人に相談するか何か行動しようぜ。俺らの作戦じゃなくてもいいから」

坂倉「・・・大人は・・信用できねえ・・・」

俺は修学旅行の夜に聞いていた。

児童相談所っていうのは早々簡単に引き取ってはくれないこと。

度を越し、生命の危機に達するような場合じゃない限り1週間に1度訪問してくるぐらいで役に立たないこと。

先生は話を聞くだけで問題を持ってこられるのが迷惑というのを露骨に表情にだし、何かにつけては「話し合え」しか言ってくれなかったこと。

だから俺は本田に相談したのもあった。

54 : 2022/01/04(火) 06:44:38.69 ID:NQ4Tkp190
俺「だったら・・・やってみようぜ!やらなきゃかわんねえよ! 大丈夫だ!徹底的にやりゃ絶対うまくいく! 母ちゃんは・・・目を覚ますって!」

坂倉「・・保障あんのかよ・・」

俺「保証なんてねえよ!でもやるしかねえよ! お前がやんなきゃ意味がねえし!やろうぜ!」

俺はもう考えることをやめた。とりあえず何かしなきゃ!それだけで自分を突き動かしてた。

子供は思慮が浅いから間違いを起こす。今になってわかることだが当時は勢いが大事!というのもあった。なせば成る!俺はそれだけを信じて必死に説得した。

地面に落としていた目線は徐々に上に登ってくる。

なんともいえない悲しいような悩んだようなそんあ目立った。目の奥では不安がみえみえで誰かが横からやめとけ!って止めて欲しそうな目。

しかし俺はもう引き返す術を知らなかった・・・

坂倉「・・・・・・・・わかった・・・やるよ・・」

12歳の少年たちは一歩踏み出すことになった。後退の一歩をたどるとは知らずに・・・

55 : 2022/01/04(火) 06:45:13.75 ID:NQ4Tkp190
俺はすぐに本田と坂倉を合わせた。

ガキ同士にちょっとした不良気取りの二人はすぐに打ち解けた。

そして本田が細かく作戦を立てていく・・・

まず坂倉の母親は夜にスナックに勤めていて帰ってくるのは夜中の2時頃だということ。

オヤジはたいがいパチンコに行っているが夜11時にはほぼいることを把握。

そこから、土曜日に全員本田の家に泊まり 準備を整え深夜に抜けだし坂倉の家に出撃し 有無を言わさず襲い掛かるという流れでまとまった。

本田「でさ・・・悪いな。俺もいろいろ仲間誘ったんだけど誰も引き受けてくれなかったんだよ。3人だけだけど・・まあなんとかなるだろ!」

子供3人対大人1人

俺は自信はあった。喧嘩で負けたことがないし本田も坂倉も同じくらい強い。

俺らが力を合わせれば大人の一人ぐらい楽勝でぶっ倒せると信じて疑わなかった。が・・・・

俺「なぁ?一応さ・・・武器を持っていかね?」

坂倉「ぶ・・武器って!お前・・!それはやりすぎだろ!

56 : 2022/01/04(火) 06:45:42.63 ID:NQ4Tkp190
俺「いや。絶対負けらんねえじゃん。武器使った方が絶対いいって! 何も包丁なんて持っていこうって言ってるわけじゃねえ。 バットとかそんなんさ・・・持っていってさ。」

坂倉「それは絶対だめだ!何よりきたねえ! ただでさえ3対1できたねえのに! 武器使うならこの話はなしだ!」

俺「・・わかった!んじゃ武器はやめよう。」

もしこのとき俺達が武器を使用していたら新聞に載っていたかもしれないと今でも思う。

作戦が決まり、俺達は一本のタバコを回し吸いした。

これは俺が提案したんだが ろくでないブルースで四天王が敵同士一致団結の証にタバコを回し吸いするシーンがあって俺はそれに憧れていた。

俺「なんかさ・・・かっこよくね?俺達。」

本田「かっけえかも!ぜってえいける!やれるって!」

坂倉「・・・俺もやる気出てきた!やってやろうぜ!」

精神的にも頭脳的にもまだまだ子供な彼らは無鉄砲なことに気付かない。

気付かないまま日々は過ぎていき運命の土曜日を迎える。

57 : 2022/01/04(火) 06:45:56.61 ID:NQ4Tkp190
予定通り本田の家に集まる。

夕方の5時に集まったがみな、誰も口を開かなかった。

4日前にバカ騒ぎしていた勢いは 既に冷め、現実に行動を起こすことに みな、恐怖感を覚えていた。

しかし、少年たちは引く術を知らなかった。

一度乗りかけた船。降りることは恥と思っていた。

重苦しい空気の中、予定時刻の11時を迎える・・・

本田「よし・・・行こうぜ!」

俺・坂倉「・・・・うし!いこう!」

本田の部屋は家とは離れたプレハブであり 夜中に抜け出すのは容易だった。

3人自転車にまたがり目的地へとこぎ進めていく・・・

58 : 2022/01/04(火) 06:46:22.09 ID:NQ4Tkp190
外は夏を前に蒸し暑かった・・はずだった。

しかし緊張感に包まれ、背中には冷たい汗がまるで生き物のように滑り落ちていくのを感じる・・・

誰もが緊張感に包まれ、心のどこかで「着かないでくれ」と思っていただろう。しかしこぎ進めている限り目的地までの距離は縮まり、ついにアパート前に到着した・・・

本田「・・いいか・・手順通りいくぞ。俺が最初に足に飛びかかって動きを抑える。 そこにお前ら二人が攻撃だ。いいな!」

俺「ああ・・大丈夫だ。」

坂倉「・・・おう。」

本田「1はいい。坂倉!手加減すんなよ!ひるんだらやられるからな!」

坂倉「・・・・ああ・・」

本田「よし!行くぜ!」

59 : 2022/01/04(火) 06:47:27.27 ID:NQ4Tkp190
階段のアパートをゆっくり登り扉の前に立つ・・・
一瞬時間が止まるのを感じ、全ての物の存在が頭から消える・・

本田「おらああああああ!」

扉を開けて本田が飛びかかった!

オヤジ「な・・なんだてめえ!」

本田「うるせえええええええ!」

親父は布団で横になりテレビを見ていた。
そこに目がけて本田が飛びかかりタックルを決め足を押えこむ!

本田「次!行け!」

しかし予定外の事がここで起こった!
扉は一人通るスペースしかない!

二人でどっちが行くかお互い見合ってしまった!

オヤジ「な・・なんだなんだてめえらあああ!」

本田「早く!次こいよ!」

俺「坂倉!いけ!」

坂倉「お・・おう!」

ここでまたミスを犯す・・・

60 : 2022/01/04(火) 06:47:46.54 ID:dFbC5V+6a
終わりのないのが終わり
61 : 2022/01/04(火) 06:48:00.56 ID:ziZ00QC70
いつまで続くんや?
62 : 2022/01/04(火) 06:48:38.44 ID:NQ4Tkp190
坂倉が靴を脱ぎ始めたのだ・・・

俺「ば・・ばっか!んなことしてねえで早くいけ!

坂倉「あ・・・・」

本田「いってえええええええええ!」

足にしがみついていた本田の髪の毛を両手で掴み 思いきり引き上げてる鬼の表情の大人がいる・・・

オヤジ「ガキャアアアアア!ぶっ殺してやらああああ!」

アパート中に声が響きわたる・・・・
俺達はまたしてもミスを犯していた・・・
騒げば近所に叫び声が漏れることに・・・・
俺と坂倉はもう動けなかった。

本田「いってええええ!助けてくれえ!」

本田の叫び声がこだまするが俺達は動けなかった・・・
親に怒られたことは何度もある。
大人が怖いということは知っていた・・つもりだった。
自分よりでかい人間が低い声で怒鳴ると すくみあがるほどの恐怖を感じること。
いくら柔道をやっていたとはいえ しょせん大人と子供では筋力の差が強すぎて 髪をつかまれひねりあげられただけで 強いと思い込んでた本田がいとも簡単に動けなくされてたこと。
俺はもう足が震えて膝が笑い逃げることすらできなかった。
草食動物は肉食動物ににらまれたら動けなくなるらしいが身をもって体感した。
恐怖の中・・体は動かない・・・

63 : 2022/01/04(火) 06:48:44.79 ID:CRyZgVwe0
病院の預かる処となった
64 : 2022/01/04(火) 06:48:55.66 ID:NQ4Tkp190
オヤジ「てめええ!たかしいいい! なんだこいつらはあああ!」

坂倉「・・・ご・・ごめん・・・ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

もう俺たちの戦意は喪失していた・・・

作戦は失敗に終わったのだ・・・

近所の人が声を聞いて様子を見に来て警察に通報する・・・

ドアは開けっぱなし。

近所の人が覗いてる中、俺達3人は正座させられ右に左に顔を蹴られ続けた・・・

痛い・・というより大人の本気の攻撃は重い・・・

一気に首から先を引きちぎられる感覚・・・

蹴られては「起き上がれええ!」と髪をつかまれ正座させられ また右に左にと顔を蹴り倒され続けた・・・・

65 : 2022/01/04(火) 06:49:11.57 ID:NQ4Tkp190
所の人たちはあまりの迫力に ただただおびえていた・・・・

そんな中、警察が到着する。

もうここらへんの記憶があまりない。

オヤジが気が狂ったように怒鳴り続け 鼻血を出していた俺達はとりあえず病院へと連れていかれた。

もう頭の中が恐怖でぐっちゃぐちゃになり 何が起こってるのかわからない状況。

病院で治療を受けながら、警察も隣につき いろいろ聞かれたが何を答えたか覚えていない。

はっきりと思いだせるのはその先の警察署から。

俺達3人は別々の部屋に連れられバラバラに調書を受けることになった。

66 : 2022/01/04(火) 06:50:10.51 ID:NQ4Tkp190
俺達3人は別々の部屋に連れられバラバラに調書を受けることになった。

警察というのはグループで捕まえた時は必ず別々に調書を取る。

口裏を合わせて逃げられないようにするためらしいが実際はもっと違う所にあると思う・・・

警察「なんでこんなことをしたんだ?」

俺「・・・・・・」

警察「たしかに黙秘権はある。ただな? 黙ってるだけじゃ帰れないぞ!これは事件なんだ!」」

俺「・・・・・・・・・・・」

警察「・・・おまえらのやった事は暴行だ。 子供とはいえ3人がかりで襲いかかっていくなんて俺は今まで聞いたことがない。」

俺「・・・・・・・・・・」

黙ることしかできなかった。
真実を話せば もしかしたら坂倉を救ってくれるかもしれない。
ただ坂倉は引っ越す前に児童相談所から連絡が入り 警察が来たことがあったらしいが「躾だ」の一点張りの父親に対し
「やりすぎないでください」の一言で済ませて何もしてくれなかったと聞いた。
俺は警察を信用してなかった。
その上これ以上あいつの事を誰かにしゃべりたくなかった。

67 : 2022/01/04(火) 06:51:06.08 ID:NQ4Tkp190
警察「・・・おまえ・・・と、本田って言ったな。 おまえらが坂倉をそそのかして家から金を取ろうとしたらしいな?」

俺「・・はぁ?何言ってんですか?」

警察「だってそうだろう。親に殴りかかって行くなんて普通じゃない。 おまえらがあの家に金を取り行って襲いかかった。違うか?」

俺「・・・・馬鹿じゃないっすか?んなわけないでしょう。」

警察「本田はそれを認めたって言ってたぞ。」

俺「・・・・・・・・・・・・・・」

警察「認めたらどうだ?」

俺「・・・・・・・・・・・・」

警察「・・・・・黙ってないで何かしゃべらんか!!!!」

俺「・・・・・あの・・・」

警察「なんだ?しゃべる気になったのか!?」

俺「いえ。すいませんけどウソばっかやめてもらえますか?」

警察「・・・・・・・・・」

俺「だって強盗目的なんて絶対ないですもん。金なんて取る気もなかった。そんな計画なんか一切なかった。なのになんでウソをつくんですか?本田が言った?バカ言わないでください。そんな計画自体がないのに言うわけないでしょう?」

警察「・・・・・おまえらを試しただけだ・・・」

俺「俺らには真実を吐けって騒ぐのに自分達はウソはいいんですか?素直にしゃべってくれない人にこっちがしゃべると思いますか?ふざけん・・「黙れクソガキが!!てめえらは犯罪者なんだよ!大人舐めてんじゃねえ!いいから全部吐けコラァ!」
また胸倉をつかまれ振り回された・・・

68 : 2022/01/04(火) 06:51:27.91 ID:NQ4Tkp190
調書が始まって何分経っただろうか・・

部屋に時計はない。長いのか短いのか・・・

何もしゃべらない俺をほおっておき

何度か部屋を行ったり来たりしはじめた警察。

何度か行ったり来たりした後に警察はずっと黙って俺の前に座っていた。

俺も黙って座っていた。

空気が重い・・・・向こうも長期戦の構えなのか・・?

本当にこのまま帰してもらえなかったらどうしよう?

何か聞かれてる方がよっぽど・・楽だ・・・

沈黙というのはより一層心に不安を植え付ける。

出たり入ったりされると、このままどこかに移動させられるのか?

刑務所に入れられてしまうんじゃないか?

身長だけは高くても心も頭脳も小学6年生。

少年法すらもよくわかっていなかった少年には不安だけが胸をよぎり頭の中でこの先訪れるであろう最悪の事態を妄想し、震えていた・・・

69 : 2022/01/04(火) 06:51:46.11 ID:NQ4Tkp190
「どうなるんだろう・・」と不安もピークにさしかかろうというときガチャっと部屋の扉が開いた。

警察「こちらが1の母親です。」

え・・・?母ちゃん・・・・?

顔を上げると、パジャマ姿で髪の毛はボサボサ。

すっぴん姿の母ちゃんが息を切らして立っていた・・・

俺はよく覚えてなかったが病院でどうも自分の住所と電話番号を教えていたようだ。

そこから母ちゃんに連絡が入り迎えにきたらしい。

しかしそんな事情を聞かされていなかった俺には母ちゃんが目の前に立ってた事が信じられなかった・・

と、同時に母ちゃんを見て、ずっと重力に負けず

瞳の中に閉じ込めていた涙が緩みと共に地面に向かってスルっと落ちていく・・・

俺「か・・かあち・・「このバカ息子が〜!!!」

70 : 2022/01/04(火) 06:52:02.73 ID:NQ4Tkp190
俺は母ちゃんの飛び蹴りを顔に受けイスから後ろに転げ落ちた・・・・

母ちゃん「このバカが!バカが!バカが! 何を警察に迷惑かけてんだ!このガキャ〜! 今、この場でお前を56す!そして私も死んでやる!」

もう何がなんだかわからない・・

母ちゃんは俺を助けに来てくれたんじゃないのか?

俺の救世主は倒れている俺の腹に座って馬乗りになり顔を右に左に張り飛ばしている・・・・

な・・なぜ?救世主は助けてくれる人じゃないのか?

なぜこの人は俺への追撃を加えどなり散らして顔にツバを飛ばすんだ・・・?

とにかく俺は有無を言わさずビンタされ続けた・・・

71 : 2022/01/04(火) 06:52:21.89 ID:NQ4Tkp190
このとき、オヤジ襲撃事件後に蹴り飛ばされ続けたせいで

頬が腫れていた・・・

そこへの追撃のビンタは痛みを越えて火であぶったスプーンをくっつけられるような火傷にも似た熱さを感じた・・・

警察「お・・お母さん!落ち着いて!落ち着いてください!」

母ちゃん「本当にすみません!このバカがご迷惑を・・・ オラァ!立てぇ!立って頭を下げろってんだよ!」

俺「・・・ず・・ずびばせんでふた・・」

母ちゃん「バカにしてんのか! はっきりしゃべれ!」

いや、あんたが腫れてた頬をさらに張ってまた口の中が切れたからうまくしゃべれなくなったんじゃん・・・・

言い訳する隙はなくまた俺は一発頬を張られた・・・

72 : 2022/01/04(火) 06:52:35.68 ID:NQ4Tkp190
その後、母ちゃんの勢いに警察は飲みこまれ

とりあえずお引き取りください、もう遅いですし 明日の昼の三時にまた来てください・・と、告げられ 俺はそのまま母ちゃんに渡され帰ることになった。

外に出ると警察署に一本の時計が立っており 時刻は深夜2時をさしていた。

思ったより早く帰れるもんだなと思ったが本田と坂倉はまだ帰れていなかったらしい。

本田は首謀者として実際に襲い掛かったのもあり 俺よりさらに根掘り葉掘り聞かれ続け

坂倉は実の親の襲撃という事実と体の傷から虐待の可能性があるということ。

ただ警察に暴力親父は「こんな事件を起こすガキだろ?躾が厳しくなって当然!こんな悪さするガキに口だけで伝わらねえだろ!親として更生しようとしてただけだ!」と言い張り 実際警察はどう扱うべきか困っていたそうだ。

73 : 2022/01/04(火) 06:52:53.60 ID:NQ4Tkp190
俺らが何もしていなければ虐待で行けるのだが いかんせん俺らは3人がかりで襲撃にいってるとんでもない悪ガキだ。

そんな悪ガキ達だからこそ躾が厳しくなった・・というのも筋が通るとかなんとかで下手に動けない状態になってたとか。

本田は3時半まで残って調書を取られ

坂倉に至っては朝5時まで どうするか警察に検討され 結局坂倉の母ちゃんが引き取りに来たらしい。

またあとで聞いた話だが 計画的犯行だが武器を持っていなかったので殺人になるような事態は考えにくくただの暴行事件になったこと。

そして襲撃先に実行犯の息子がいたことにより見ず知らずの他人を襲ったわけではなく 無理矢理引きとめてまで調査するほどの事件ではないと判断されたらしい。

このときバットを持っていってたら きっとこうすんなりとは出てこなかっただろう。

そんな事になってるとは知らず俺は母ちゃんの車に乗った。

74 : 2022/01/04(火) 06:53:08.27 ID:NQ4Tkp190
いつも俺は助手席に乗っていた。

しかしこの日ばかりは助手席に乗る気がしなかった。というか乗れなかった。

あそこまで怒り狂われ、馬乗りになられて張り倒された恐怖と、こんな夜中に迎えにこさせた事を申し訳なく思い、後部座席でずっと外の景色を眺めていた。

見たこともない風景が徐々に見たことのある風景に変わっていく・・・

坂倉とよく一緒に菓子を買いに行ったセブンイレブンを曲がり車は道路をまたぐように横を向ける。

ピーピーとバックを知らせる音が鳴り音が鳴りやみ家に着いたことを知らせる。

俺は警察からここまでの間、一切口を開かなかった。母ちゃんも俺に一切口を開かなかった。

玄関を開けて部屋に入り部屋に戻りたいが戻ってはいけない気がするし とりあえずリビングに行きソファーに腰をかけた。

母ちゃんはそのまま台所へと消えていった・・・

75 : 2022/01/04(火) 06:53:23.94 ID:NQ4Tkp190
「どうしよう・・謝っても許してくれないだろうな・・」

もうどうするべきかわからなかった。

謝って許されるようなものじゃないってわかってた。

家出するか・・・

そんな事をうつむいて考えていたら目の前で「カチャン!」と音が鳴った。

顔を上げるとテーブルに特大のおにぎりが二個。きっちりのりも巻いてある。

母ちゃん・・・・?

さらに顔を上へと恐る恐る上げていく・・・

母ちゃんは俺と目線を合わせた・・・・

坂倉と同じく、つり目の母ちゃんの目がぐぐっと横に長く伸びた。

口角がくっとあがり、俺がよく知ってるいつもの母ちゃんの笑顔がそこにあった。

76 : 2022/01/04(火) 06:53:39.58 ID:NQ4Tkp190
母ちゃん「よし!とりあえず腹減っただろう!食べなさい!」

俺「え・・・?俺・・腹へってないんだけど・・」

母ちゃん「男だろ!まずは食べな!」

俺「いや・・・口の中切ってて痛いし・・」

母ちゃん「あらあら、1ちゃん。食べさせて欲しいんでちゅか〜?」

俺「ば・・バカ野郎!一人で食えるよ。」

俺はいろいろと不安だったが母ちゃんの笑顔を見て、ほっとした。

胸で暴れていた雷雲ののようなうなりがが一気に消え去り、胸の中が解放され晴れ渡っていく・・・

嬉しくてちょっと泣きながらおにぎりを食べた。

77 : 2022/01/04(火) 06:53:55.06 ID:NQ4Tkp190
一通り食べ終わると母ちゃんは笑顔のまま俺に対峙し話しかけてきた。

母ちゃん「んで。何があってバカなまねしたんだ? 母ちゃんはおまえらが坂倉君の家に行ってお父さんに襲い掛かったとしか聞いてない。 理由を聞いてもおまえら全員しゃべらなくて わからないと警察に言われた。」

俺「・・・・・・・・・・・・・」

母ちゃん「いつも言ってただろ?悪さするなら私の前でやれって。約束守らないからこういうことになるんだ。」

俺「・・・・母ちゃん・・・・」

母ちゃん「・・・なんだ?」

俺「さすがに母ちゃんを「一緒にオヤジを殴りに行こうか?」って誘えねえよ・・・」

母ちゃん「ぷっ!そりゃそうだ。まあいい。理由を教えてみ?」

俺「・・・・・・・・・・・」

79 : 2022/01/04(火) 06:54:36.53 ID:NQ4Tkp190
母ちゃん「母ちゃんにも黙るつもりか?」

俺「・・・・・・・・・・・・・」

俺は母ちゃんに言うべきか悩んでいた・・・

母ちゃん「お前には責任がある。私を巻き込んだのはお前だ。私はお前を迎えに行った。すぐに解放させたくて殴りつけたけど私はお前を信じてる。信じてるからこそ巻き込んだ責任として理由を教えてほしい。」

俺「・・・・・・・・・・・・・」

母ちゃん「心配すんな。お前がもし間違った理由で今回事件を起こしてたら根性叩き直してやる。私はお前を見捨てない。信用しなさい。どんな理由があったってお前は私の子供だ。最後まで私はお前の味方してやる。だから理由を話してみろ。」

ずっと重い重い荷物を抱えてるようだった。
坂倉の虐待という荷物を抱え
本田に相談したという荷物を抱え
子供だけで大人を襲撃しに行くという犯罪行為を抱え
逆襲にあい、深く体と心に大人の恐ろしさを抱え
まだまだ子供だった俺には両手いっぱいしか持てない荷物を肩に背負わされ、足にくくりつけられ俺は身動きできなくなっていた。
どれもこれも俺にとっては大事な大事な荷物。気安く誰かに預けられない。
重い重い荷物を背負ってきたけど一番身近な人が一緒に背負ってくれると言ってくれた。
俺はこの身近な母に荷物を預けてみることにした。

80 : 2022/01/04(火) 06:54:56.99 ID:NQ4Tkp190
俺は嬉しくて嬉しくて涙が出た。

嬉しいとこんなに涙が出てくるんだって初めて知った。涙を流した重さの分だけ体と心が軽くなっていくのがわかった。

俺は母ちゃんにすべてを話した。

坂倉がオヤジに虐待されてたこと。

実の母親に見殺し状態にされてること。

それをどうにかしたくて本田を誘い坂倉の親父を襲撃したこと。

ビビって本田を見殺しにしたこと。

正座させられ蹴られ続けられたこと。

重い荷物を全部母ちゃんに預けた。

母ちゃんは何も言わずに全部聞いてくれた。

俺「・・・・ってわけで昨日捕まったんだ・・」

母ちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・」

俺「・・・・・・母ちゃん?」

母ちゃん「・・・・お前は間違ってない!」

コメント

タイトルとURLをコピーしました