手塚治虫の「火の鳥」発表から70周年。壮大なテーマを子どもにも分かりやすくするため、初めて絵本に

漫画家の手塚治虫（１９２８～８９年）がライフワークとして描いた「火の鳥」が今春、初めて絵本化される。手塚プロダクションが絵本作家の鈴木まもるさん（７１）に制作を依頼した。今年は「火の鳥」発表から７０周年。鈴木さんは「災害や紛争などで不安な時代に、手塚先生の命のメッセージを感じてほしい」と話す。

「火の鳥」は、１９５４年の「漫画少年」に初めて発表された。古代から超未来までを舞台に、永遠の命を持つという火の鳥をめぐる人間の業を描く。時空を超えた壮大な物語だ。

　鈴木さんは、「子どもの頃から手塚先生の大ファン」で、マンガ家を志した。その後絵本作家となり、「戦争をやめた人たち　１９１４年のクリスマス休戦」など、生命の尊さを描く作品を発表してきた。鳥の巣の造形の美にもひかれ、独学で鳥の巣を研究。「ぼくの鳥の巣絵日記」などの作品で人気を集める。

　昨年のラジオ番組で、鳥の巣に強くひかれることや、生命をテーマとした絵本を作っていることが放送された。それを聞いた内藤出・手塚プロダクション広告商品事業部参与が連絡した。「命や平和の大切さというテーマは、手塚先生と鈴木さんに共通している。絵本なら幅広い世代に伝えられる」。意見を交わす中で絵本の制作が決まった。

　鈴木さんは、「憧れの人の作品を原作に絵本を作ることになるなんて、言葉にできないほど驚いた」と振り返る。一方で、子どもが読むには難しく、若い親の中には原作になじみがない人もいるのではないかと考えた。「子どもにもわかる言葉で表現を」と思い、巣の周りに集まる様々な動物が、火の鳥が語る命の話に、耳を傾ける形にした。

気高く、優しい火の鳥が語りかけるような言葉には、命のかけがえのなさや不思議さがにじむ。今月中旬に原画を完成させ、版元でお披露目をした際は、社員から歓声が上がった。

　絵本「火の鳥　いのちの物語」は金の星社から、４月下旬に刊行される予定。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/articles/20240130-OYT1T50113/