(๑ºんº)「僕は家出する。親切なおじさんのところへ行く。船橋の方に優しいおじさんがいる。お母さんより大事な人だ

優しいおじさん事件（1990年2月）

1990年2月23日、千葉県船橋市立宮本小学校6年生の宮城拓磨くん（当時12歳）が東京都文京区の自宅を出たまま行方が分からなくなった。拓磨くんは家を出る際、「僕は家出する。親切なおじさんのところへ行く」「船橋の方に優しいおじさんがいる。そのおじさんはお母さんより大事な人だ」と母親の要子さん（当時33歳）に言い残していた。要子さんは2月26日に警察に捜索願を届け出た。

失踪前日の22日、拓磨くんは要子さんと口喧嘩をしていた。要子さんは拓磨くんの両手足などにあざができていることを不審に思い、「優しいおじさん」との関係性を問い詰めたところ拓磨くんと口論になった。翌朝拓磨くんは「学校へ行く」と言い、ランドセルを持って家を出たまま戻ることはなかった。拓磨くんはそれまでにも何度か無断外泊をすることがあり、体にあざをつけて帰ってくることがあったという。

警察は拓磨くんが事件に巻き込まれた可能性が高いとして3月13日より公開捜査を開始。同年3月18日午後12時20分ごろ、千葉県我孫子市の利根川で遺体となって発見された。拓磨くんの遺体は全裸状態で、両足首をひもで縛られていた。検視の結果、拓磨くんの死因は水死と判明。頬に縄で縛られたような跡と全身に内出血の跡が残っていたことから、犯人に拷問を受けたと思われる。

また、拓磨くんの臓器内には川の水から検出される植物性プランクトンが含まれていないことから、風呂の水などに押しつけられて窒息死した後、川へ投げ捨てられたと推測された。死亡推定日時は2月25日から3月4日頃。胃の中は空っぽで、長時間食事をしていない状態だった。

拓磨くんは家出前、「サイジョウ」と名乗る30代の男性と付き合っていることを母親にほのめかしていたほか、「僕には優しいおじさんがいる」「おじさんに会ったのは船橋市のららぽーと（ショッピングセンター）」「ごちそうしてくれたり、いろんなところに連れて行ってくれる」などと話しており、この男性を慕っていたことが伺えた。

警察は拓磨くんの友人などから「優しいおじさん」について聞いたが、知っている同級生は1人もいなかった。

拓磨くんは前年の12月に千葉県船橋市から文京区に転居。卒業まで間もないため転校はせずに船橋の小学校へ電車で通学していた。自宅近くの千石駅から地下鉄都営三田線に乗り、水道橋駅でJR総武線に乗り換え、東船橋駅で下車後、歩いて学校まで行っていた。この通学路の途中で犯人と知り合ったものと思われる。

拓磨くんが失踪する前には自宅に何度か無言電話がかかることもあった。要子さんが電話を切ると、拓磨くんは自分宛にかかってきた電話ではないかと要子さんを問い詰めていたことから、電話の相手は「優しいおじさん」で、要子さんが働いている間に拓磨くんと電話で連絡を取っていたことが推測される。

拓磨くんが「優しいおじさん」に会ったとされる「ららぽーと」は、学校を挟んで駅と反対方向にあることから、警察は東船橋駅～学校～ららぽーとを結ぶ線上を中心に聞き込み操作を進めたが、目撃証言は少なく、不審な人物に関する情報も得られなかった。2005年2月23日、公訴時効が成立。

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