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踏み込む日米、中国猛反発「台湾に手を出す意味考えよ」

日米首脳の共同声明に「台湾」が明記された。中国の台頭に強い危機感を抱く米国に引きずられるように、日本が足並みをそろえるとのメッセージを発信する形になった。人権侵害に示した「懸念」を含め、中国側は猛反発しており、関係諸国に与える今後の影響は、見通せない。
「米日の発言はすでに二国間関係の正常な発展という範囲を完全に超えており、第三者の利益を損ない、地域国の相互理解と信頼を損ない、アジア太平洋の平和と安定を損なっている」。在米中国大使館の報道官は日米首脳会談を受けた談話を発表し、「強い不満と断固反対」を表明した。在日中国大使館も同様の談話で「台湾、新疆ウイグル自治区などの問題は中国内政であり干渉は許さない。日米が何を言っても、何をしても釣魚島（尖閣諸島の中国名）が中国に属する客観的事実は変えられない」と続いた。
今回の会談で、中国が重く見るのが台湾への言及だ。建国以来、中台統一は共産党政権の悲願であり、歴代指導者の課題だった。とりわけ台湾海峡を隔てて台湾と向き合う福建省や浙江省で政治キャリアを積んだ習近平（シーチンピン）国家主席にとって、統一は「最大の使命」（党関係者）とも言える重要テーマだ。
習氏は2015年、当時の馬英九（マーインチウ）総統と中台分断後初となる首脳会談に臨み、「一つの中国」原則を確認。翌年の総統選で中国と距離を置く民進党の蔡英文（ツァイインウェン）氏が当選した後も、19年の演説で包括的な台湾政策を打ち出し「一国二制度」の導入を正式に呼びかけた。台湾への武力的な圧力を強める現在でも、この方針は変更していない。
それだけに習指導部にとって、日米が台湾情勢への関与を示した点は重い。特にこれまでの政治文書で「台湾は中国の不可分の領土」とする中国の立場に理解を示し、「専守防衛」の方針からも中台問題に深く関わってこなかった日本の変化に不満を抱いている。
党機関紙・人民日報系の環球時報（電子版）は17日の社説で、日本が米国の対中政策に足並みをそろえる理由について「日本外交は『半主権』レベルで米国に逆らえず、中国の発展にも嫉妬している」と分析。「数年前に中国と歩み寄ったのに、突然また路線を変え中日関係改善の勢いを台無しにしている。米国の圧力によるものだとしても、日本はあまりに近視眼的だ」と批判した。
中国は近年、対米関係に集中する理由から日本を含む周辺外交の立て直しを進めてきた。その外交戦略は当面維持される見通しだが、中国外交筋は「台湾に手を出すという意味を日本はよく考える必要がある。これは習指導部の重要性からも、歴史的な意味からも釣魚島やウイグル族などの問題の比ではない」と警告する。
沈黙保つ台湾したたかにならざるを得ない訳は
台湾は17日昼、総統府と外交部が報道官名で相次いで日米首脳会談の共同声明に対し、感謝するコメントを発表した。一方で、蔡英文（ツァイインウェン）総統は同日夕の時点で、沈黙を守っている。直前に訪台したアーミテージ元米国務副長官らを自宅で歓待し、即座に写真付きで自身のフェイスブックに投稿したのとは異なる対応だ。
蔡英文（ツァイインウェン）総統はこれまで、台湾の民主主義や台湾が世界で優位を保つ半導体産業の重要性を強調し、日米の支援取り付けに尽力。一方、中国に対しても、過度な刺激を避けてきた。
その理由は経済や人的交流の深さと、軍事力の劣勢だ。台湾当局の統計では、昨年の貿易額で対中国（香港を含む）は34・2%で国別トップ。中国で働く台湾人ビジネスマンは39万5千人（2019年）で、域外労働者の半数に上る。また、日米中などの資料によると、今年の軍事予算は中国の約23兆円に対し、台湾は約1・4兆円。総兵力は中国の約204万人に対し、台湾は約16万人にとどまる。航空兵力は中国の作戦機が計3千機で、台湾は約500機だ。
台湾は今回の日米の共同声明を、自身の成果とみている。ただ、1979年に米国から断交された苦い記憶も消えていない。蔡政権のある高官は「米国頼みでなく、台湾を自ら守る必要がある」と語り、したたかな外交戦略が必要だとの認識を示す。また、蔡政権の与党議員は「蔡総統は中国を過度に刺激するのを避け、出方を注視しているのだろう」と指摘。その上で、「今回の日米会談で日本の態度の変化は注目に値する。今後の対台湾政策を見守りたい」と話した。
台湾問題の起源
台湾問題の起源は、国民党政権と共産党との内戦にさかのぼる。
日中戦争でいったん中断した内戦は、日本の敗戦後に再開。1949年に共産党が中華人民共和国建国を宣言すると、国民党は台湾に逃れた。